こころの話

人間の、変わる力

DNAのお話は、私の学生時代にはまだ授業でも出てこなくて
さほど真剣に考えたこともなく、せいぜいドラマや事件で
話題になってるなぁ~、くらいのことでしたが…

図書館でたまたま、こんなタイトルを見つけたので
思わず手にとってしまいました

遺伝子があなたをそうさせる―喫煙からダイエットまで
(2002/08)
ディーン ヘイマー、ピーター コープランド 他

遺伝子があなたをそうさせる

犯罪の決め手となる、すべての人が違うと言うDNAが
どんなものなのか、想像も付かなかったのですが、
冒頭に分かりやすい例がありました。

例えばある図書館に蔵書が3万冊あるとする
その中の、たった一冊の中の、さらにたった一行が違う、
というのが個人の識別、

というよな表記があって、技術が進歩していないころに
冤罪が起きてしまったことも納得できた次第です。

たった一行の違いがわれわれ個人の違い、ということは
動物を見ればどれも似たり寄ったりに見えるように
人類だってほとんど同じ、ということなんでしょうね。
大きくみれば、ね。

だけど現実には、われわれは今日も、小さな違いに苦しむし
差別されたり、排除されたり、大きな違いを生み出しています。

さて、この本の中の「遺伝子がそうさせる」部分ですが
まず、著者が一貫して説いているのは、
遺伝子で人間性が決まるのではない、ということです。
これをしっかり理解しないと、
  遺伝なんだから、どうせ何をやっても無駄
というように、後ろ向きの決め付けになってしまいます。

環境、というのは人の成長にとって大事な要素ではありますが
絶対に必要な点ではない、とこの本は主張します。
例えば親が何らかの依存症でもそこで育った子が
必ずしもそうなるものではない、ということです。
この辺はデリケートな話なので、興味のある方はぜひ本書を
実際にお読みください。

引き継がれる遺伝子は、その傾向が強い、ということで
体の弱い部分や、精神面でも似る傾向がある、ということです。

ただ、不思議なことに、この似た傾向は幼少期よりも
成人以降のほうが出やすいということなんです。
幼少期のほうは、環境因に左右されやすいんじゃないでしょうか。
逆に、トシを重ねるとともに、親に似てきたなぁ、なんて
はっと思うこともありますよね。

それにもうひとつ、母親の系統が出やすいそうですね。
ウチの子どもたちが、なぜか自分の母方に似ている気がしたのは
そんな理由もあったのかな、と驚いてしまいました…

本書は、一卵性双生児の追跡調査や科学的根拠に基づき、
長期にわたっての検証の下、大変分かりやすい内容です。

その上で、やはり著者が再三述べている点に注目ください。

  基本的な気質は変化しにくいとしても
  人は経験から学ぶことができる。
  パーソナリティのなかでも意識的に獲得できる部分である
  性格は、年をとってからでも改善できる。

人は自分を変えることが出来る、と彼らは結論付けています。
自己に否定的で、損害回避傾向の強い遺伝子を持っていたとしても…

「体験の美食家になることです。小さな喜びをせっせと味わえば、
セットされている気分のポイントは上がっていきます。
おいしい食事、庭仕事、友だちとのつきあいなど、気分をよくする
小さなことを見つけて、暮らしにちりばめるのです。長いあいだには
このほうが、大きな成果を達成して一時的に気分を高揚させるよりも
ずっとあなたを幸福にしてくれます」

どうしても、こころが弱ってくると、自分自身を決め付けてしまう…

  だって、どうせ、結局…

でもね、人間には変わる力が備わっているんです。
ちょっとの勇気を出すことも、勇気を持ちたいっていう気持ちも、
それはもう、自分が変わり始めている、ってことなんですよね。

もしそんな気持ちに 寄り添ってほしいと思ったら
ちょっと周囲を見渡してみませんか。
ふと振り返れば、ひとりじゃない、って気づくかもしれませんよ。

この記事は、2011年7月1日(金)にFC2ブログに投稿したものを編集しています。

投稿者

tokyomatsuzaki@gmail.com
サイト管理人です。

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